佐原の町を歩いていると、
どこか静かに、しかし凛と佇む店があります。
「山城屋茶舗」
海苔とお茶だけを扱う専門店。派手な看板も、観光向けの演出もありません。
今回お話を伺ったのは、店主の 関 謙次郎さん。
一方で、香取市内310ある自治会を束ねる自治会連合会の会長を12年以上務め、
市民代表としても地域に関わり続けてきた方です。
最初に出てきた言葉が、とても印象的でした。
「商売はね、“商道”なんですよ」

「お願いされて、やり続けてきただけ」
大内:
今日はありがとうございます。まず、関さんご自身について伺ってもいいですか?
関さん:
立派なことは何もやってないですよ。
自治会の連合会も、自分からやりたいって言ったわけじゃなくてね。
周りからお願いされて、気づいたら12年。今年で13年目です。
香取市には、310の自治会があります。
そのまとめ役を務める関さんは、市民代表として様々な会議にも出続けてきました。
関さん:
20代の頃から、スポーツ協会の役員をやってたんです。
佐原市時代からね。選手もやったし、会計も、理事長も、会長も。
お店に立ちながら、地域の役割も自然と引き受けてきた人生。
「やりたいから」ではなく、「頼まれたから、やる」。
その姿勢が、ずっと変わらず続いています。
商売は「商道」。一生をかけてできる“道”
大内:
長く続けてこられた中で、大切にしている考え方はありますか?
関さん:
剣道、柔道、茶道と同じでね。
商売にも“道”があると思ってます。
「商売武士道」「商道」。
関さんは、商いを一生をかけて積み上げていくものだと語ります。
関さん:
店主が一生かけて店を維持して、
最後に“道”ができる。
それが商売だと思ってます。
「商いは飽きない」。
忙しい日もあれば、暇な日もある。
だからこそ、続く。
続けることでしか、見えないものがある。
海苔とお茶だけを扱う、という選択
山城屋茶舗は、海苔とお茶の専門店です。
関さん:
企画品じゃないんですよ。自然相手ですから。
年によって出来も違うし、値段も全然違う。
海苔は入札制度。
温暖化の影響で不作が続く年もあり、相場は激しく動きます。
関さん:
専門店は、正直成り立ちにくい。
でもね、良い品を売る。それだけは譲れない。

「口に入った時に、美味しいかどうか」
大内:
お客さんに伝えるとき、何を一番大事にしていますか?
関さん:
結局、口に入った時に美味しいかどうかですよ。
お茶は、淹れ方で全然違う。
急須は少し大きめの方がいい。
お茶が“動く”ことで、味が出る。
関さん:
いつも同じ静岡茶を飲んでたら飽きるでしょ。
そういう時は、同じ価格帯で鹿児島茶を勧めたりね。
小さな違いを、丁寧に伝える。
それが、専門店としての役割だと感じました。
剣道がつくった、人の姿勢
関さんは、小学生の頃から剣道を続けてきました。
関さん:
姿勢、態度、段取り。
剣道も商売も、全部つながってます。
85歳になった今も、その精神は変わらない。
関さん:
体は正直だけどね(笑)。
でも、心は鍛えられてきたと思います。
親の背中を見て育ち、
「道」を大切にしてきたことが、
自然と商いにも表れています。
まちぐるみ博物館は「暮らしの記憶」

山城屋茶舗は、まちぐるみ博物館の一軒です。
関さん:
交番の奥に土蔵があるんですよ。
昔の生活用品を、そのまま残してます。
一つひとつに詳しい説明はない。
でも、確かに“暮らしの記憶”がそこにあります。
関さん:
昔はね、作り方も仕入れも、全部教えなかった。
企業秘密みたいなもんです。
「利は元にあり」。
仕入れこそが、商売の要。
キャッチコピー
「奉仕の心で販売する人」
大内:
最後に、関さんご自身を表すキャッチコピーをつけるとしたら?
関さん:
難しいな……。
でも、「親切丁寧な商品を販売します」かな。
奉仕の心で、というのが一番しっくりきます。
派手ではない。
でも、一生をかけて積み上げてきた姿勢が、ここにはあります。
佐原の町で、今日も変わらず暖簾を掲げる山城屋茶舗。
その静かな佇まいこそが、関 謙次郎さんの歩んできた“商道”そのものなのかもしれません。
取材後記
山城屋茶舗は、海苔とお茶を売る店です。
でも、それだけの店ではありません。
頼まれた役を断らず、
商売を“道”として続け、
自然相手の難しさと向き合いながら、
「良いものを売る」を貫いてきた。
静かで、誠実で、揺るがない。
その姿勢が、この店の一番の魅力だと思いました。
