醸しどころ和ぎ 店主・伊藤さんのお話

佐原のまちなかにある「醸しどころ和ぎ」。
暖簾をくぐると、炊きたてのおむすびの香りと、湯気の立つ味噌汁のやさしい匂いがふわりと広がります。

和ぎ1

迎えてくれたのは、店主の伊藤さん。
「ここはね、ただの飲食店じゃなくて、“発酵の拠点”にしたいと思っているんです」
にこやかにそう話す姿からは、この場所に込められた想いが伝わってきます。

発酵サミットがきっかけ

和ぎが生まれるきっかけは、香取市が「発酵と観光のまちづくり」を旗揚げしたことでした。
そんな中で伊藤さんの胸に芽生えたのは、「食を通じて発酵をもっと身近にしたい」という思い。
そして、約1年前に佐原で開かれた「発酵サミット」の日にオープン。
まずは“おむすびと味噌汁”からスタートし、少しずつメニューを広げながら、今の形へと育ってきました。

和ぎ2

味噌汁の一杯に込める想い

ある日、お店を訪れた小さな子が「どうしても味噌汁が飲みたい」とお母さんに話していました。
実は、お味噌汁が品切れになっていたのですが、絶対に飲ませてあげないと!と思い….
すぐに厨房でつくった一杯を、その子は嬉しそうに飲み干してくれました。
「味噌汁を飲みたいというその一言が、本当に嬉しかったんです」と伊藤さん。

味噌は塩分を気にする人も多いけれど、腎機能を整えたり排出を促したり、実は体にいいことがたくさんあります。米麹や麦味噌によっても作用が少しずつ違い、子どもの頃から自然に取り入れることが健康づくりにつながる。
伊藤さんの言葉には、生活に根ざした発酵の力を伝えたいという想いがこもっていました。

和ぎ3

旬をいただくということ

「旬のものを旬に食べる」。伊藤さんが大切にしている考えです。
夏には夏の野菜を、冬には冬の野菜を。自然のサイクルに寄り添えば、無理なく体に必要な栄養をいただくことができる。

コロナ禍で物流が滞ったときも、地元の直売所には野菜や米がしっかり並んでいました。
足元にある「地域の食の強さ」を実感した出来事でもあったそうです。

和ぎ4

「みんなの味噌」を仕込みたい

これからやってみたいことを伺うと、伊藤さんは「地域の子どもたちと一緒に味噌を仕込むこと」と話してくれました。
香取産の米と大豆を使い、木樽で仕込み、1年後に分け合う。「香取のみんなの味噌」ができたら、地域の誇りにもなるはずです。

「子どもたちが“自分たちの味噌”を楽しみにできるようになったら素敵ですよね」
そんな言葉に、未来の風景が浮かんでくるようでした。

今回のインタビューで、この場所がすでに地域の人や若い世代を迎え入れる“発酵の拠点”になっていることが伝わってきました。
心も身体も健康になるご飯を食べに行ってみてください!